広島カップ

フラガールの広島カップのレビュー・感想・評価

フラガール(2006年製作の映画)
3.3
サントリーの社員だった頃の小説家山口瞳が「トリスを飲んでハワイに行こう!」という傑作コピーを打ったのが1961年のこと。
常磐ハワイアンセンター(現スパリゾート・ハワイアンズ)の開業は1966年。私が小学校に上がる頃のことでTVでもCMが盛んに流れていて、それを観ては「ハワイに行ってみたいなぁ」と思っておりました。「トリスってのを飲むとハワイに行けるんだ?」とも呑気に思っていました。その後大人になってトリスは飲みましたがハワイに行く方は未だに実現しておりません。
そんな、ハワイが多くの日本人の憧れのマトであった時代の話です。

炭坑節からフラダンスへ。
福島県磐城市(現いわき市)の炭鉱が廃坑になることに伴い、代わりに一大温泉施設を作って町おこしをしようという町民達の挑戦を描くプロジェクトX。
なかでも温泉施設の目玉として新設されるフラダンサーズの苦悩に焦点を絞っていますが、失業に追い込まれた炭坑労働者の悲しみも織り込まれている。

こんなに福島の人達を田舎者扱いにして良いのだろうかという全体のトーンだけれどこれは何処まで実話なのだろうか。
またストーリーも月並みで多分にお涙頂戴的なエピソードが並んでいてこちらも感心しませんが、そうした事は差し引いても出演俳優が皆んな光っている所には目が行きます。
若手中堅老朽女優がそれぞれにいい味を出している。

福島の人達を田舎者扱いするという作品の方向性にピタリとハマっているフラガールを演った若手代表蒼井優、山崎静代。
借金を抱えて行き場が無くなり東京からイヤイヤやって来たフラダンスの先生を演った中堅女優松雪泰子。彼女が話す標準語が福島の地にきつく響きます。
そして、初めはフラダンスなんて大反対だったがやがて一途な娘の応援をする側に回る蒼井優の母親役の富司純子が時代の移り変わりを感じさせる貫禄を見せています。
それぞれの年代が抱えている人生模様が、街の進む方向の大転換という世相を通して階段状に判り易く見えて来ます。
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