こたつむり

フラガールのこたつむりのレビュー・感想・評価

フラガール(2006年製作の映画)
3.9
★ そうだ!
  スパリゾートハワイアンズに行こう!

一生懸命って素敵じゃん。
そう言いたくなるほどに“頑張る”物語でした。

時代の波に乗ることを選ぶ人。
流れに抗って残ることを選ぶ人。
どちらも間違いではないからこその“真剣勝負”。ゆえに魂の深いところまで訴求するのです。

何よりもスゴイのが蒼井優さんの存在感。
正直なところ、主演の松雪泰子さんを喰っていましたからね。いや、勿論、松雪さんも素晴らしいのですよ。凛とした美しさと険のある表情は彼女ならではの個性。適役でした。

しかし、それを凌駕する当時21歳の女優。
フラダンスの練習で玉の汗を額ににじませた顔は「美しい」の一言以外なく。ググッと惹き込まれるのです。各所で賞を総なめした事実も納得できるほどに圧巻でした。

これは舞台設定の妙もありますね。
“昭和40年の福島県の片隅”というセピア色の世界観と蒼井優さんの相性が抜群に良いのです。だから、何から何まで彼女のためにある物語…と言っても過言ではありません。

ただ、これは彼女の功績だけではなく。
その魅力を十全に引き出した李相日監督の手腕も見事なのです。全般的に“女性の魅力を引き出すことに長けた”御方なのでしょう。山崎静代さんの可愛らしさも上手く抽出していましたしね。

まあ、そんなわけで。
常磐ハワイアンセンターのプロモーションビデオと言いたくなるほどに“福島に行きたくなる”作品。フラダンスの魅力を真正面から描き切ったのも好感を抱く一因でした。

また、物語の横軸にある“炭鉱夫たちの悲哀”や、高度成長期の“ある一地方”を再現した筆力も見どころ。やはり、昭和を描くに必要なのは“痛み”ですよねえ。

ただ、少し気になったのは、演出まで昭和風味になっていたこと。李相日監督の他の作品…『怒り』や『悪人』でも感じた“丁寧さ”が原因だとすると、邦画の問題点が顕著に表れたのかもしれません。まあ、個人的嗜好の範疇なのですけどね…。
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