Oto

(500)日のサマーのOtoのレビュー・感想・評価

(500)日のサマー(2009年製作の映画)
3.6
とても共感した上でとても嫌いな映画。圧倒的同族嫌悪。「トラウマ恋愛映画」とか「21世紀のアニーホール」とか言われているけど、冒頭にもある通り恋愛映画ではなくホラーミステリー映画として観ていた。

MV出身が生きているのか、表現手法がいちいちおしゃれなのも嫌。結ばれた翌朝のミュージカル表現は『マーティ』のバス停ハイタッチを思い出すような多幸感なあるし、IKEAでの幸せな新婚ごっこと「We make true everyday quality!」なんか皮肉がきいてて面白いけど、どれも500日の終盤によぎる走馬灯として描かれているから胸が痛い。

現実と理想の分割画面とか、友達なはずないだろ!みたいな苦い思い出が全て回収されるサマーのその後も、やっぱりねとは思うものの本当に辛い気持ちになる。面接受けてautumnで「お後がよろしいようで」って感じにされたところで何も報われない。

お互いが影響しあって価値観を変えていくことはあれど、結局サマーの幸せの中に彼はいないし、「私もあるとき誰かのためのオータムだったろう。あなたもあるとき私のためのサマーだったのかもしれない」って吉野弘みたいなこと思ったりした。

宇多丸さんがザスミスがいい!とか「センスに溺れている間は恋愛はうまくいかない」と言っていたのが印象的だけど、自分も映画の表現ではない部分に少しは意識が向くようになったのだなぁと思った。

二人とも悪くないのにどうしてこうなるんだろね、今泉力哉が描き続ける人間の非対称な関係性というのは時代も国境も超えて普遍的なものなんだと感じた。ありふれているからこそ普遍的。
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