こぅ

喰いついたら放すなのこぅのレビュー・感想・評価

喰いついたら放すな(1960年製作の映画)
-
ピーセラの悪役決定版!!

「車さえ戻ればすべてがうまくいく」

'24 2/26ジャケ写掲載していただきました。

【タワーリング・インフェルノ】、【キングコング】のジョン・ギラーミン監督による、
硬派な【リベンジ・サスペンス】。


うだつのあがらぬ化粧品のセールスマン、ジョニー(リチャード・トッド)は、営業成績UPの為に大枚をはたいて買った車が何者かに盗まれてしまう。
ある新聞売りから情報を得た彼は、小遣い稼ぎに自動車窃盗をする不良少年トミー(アダム・フェイス)に狙いをつけ、捜査を始める…。


・脚本/撮影
曲名は出てこないが、S・キューブリックも使っていた有名なテーマ曲(EDでも併用)。
タンタラタラタラタ タンタラ〜ン♫ってやつ。
そのOPクレジットに入るタイミングも絶妙。

盗まれた 大事な車探しと窃盗団の黒幕を追い詰める、という実に シンプルなプロット で、現代では製作もリメイクにも到底至らないだろう。

アヴァンタイトルからテンポ良く導入。
ジョニーにとって
車が無いと化粧品営業マンの仕事に差し支える=生活に困る=車探しに躍起になるという状況/展開に説得力もある。
所謂、初っ端から犯人/黒幕見せてる 倒叙式 の形式。故、本題に極力集中出来る。
警察を頼りにせず、一般人が独自の捜査開始/奮闘するのは定番すぎる構成。
罪のない被害者まで出てしまう。
結局は、会社を退職 してまで執念を燃やす。

終盤、
妻/家庭を取るか、車/組織のボスを潰すか、の決断に迫られるが、怯まず 漢のプライド を貫くジョニーは硬派そのもの。
男ってのは兎角、女よりプライドを優先 しがちなんだよな〜。

あと一歩という場面でも冷静な捜査/任務を優先するトーマス警部補(ノエル・ウィルマン)にも突っかかるジョニー。
警察を当てにしていたらチャンスを逃して黒幕を追い詰められない!

クライマックスは、
バーで意を決したジョニーが、単独、メドウズ(ピーター・セラーズ)のガレージに向かう、、
ジャジーなジョン・バリーの激しい劇伴をバックに 溜め の演出が効果的。
観る者も思わず息を呑む、ガレージに居るメドウズとのクロスカット。
ドアをぶっ壊して侵入するジョニー。
一気に鳴り止む激劇伴、、
タイマン勝負のスタート!
バールVSチェーンも飛び出すデスマッチ〜決着へ!
警部補への
ジョニーが発する一言に 執念 が要約されていた。
もう誰もいる筈のない家に血だらけで戻り、、
ラストも 溜め が効かせている。

撮影は、
【デッドロック】、【アラベスク】、【フォロー・ミー】、【トップ・シークレット】等のクリストファー・チャールズで、並じゃないと直ぐに分かる、ライティング/アングル/カット割、静と動を踏まえているのが素晴らしい!
1つ、
それが如実に分かるのが、ジョニーを囲むチンピラ達のバイクでの煽りシークエンス。


・総評/キャスト
ブリティッシュでも甘さ/ユーモアが微塵もない、復讐劇の硬派な見どころ多しの隠れたブリティッシュ・ノワールと呼びたい。
あっという間の88分だったが、
気付いたら 銃/飛び道具 が一切登場しない展開も異色で、偶にはそんな世界観も良き。

リチャードが熱血漢あるリベンジャーを、
相対するラスボスのピーセラがコメディ/ユーモアを封印し、常に怒鳴り声を散らす鬼気迫る 冷徹な憎たらしい悪漢 を好演している。

悪役は憎たらしいに限るからね。

また、メドウズの愛人でトミーの恋人、
ジャッキー役のキャロル・ホワイトも魅力的。
その他、短尺でサブキャラも立たせている脚本は無駄がない。


・余談
ジョニーは、
高くも 車両保険 にも加入しておけば良かったと後悔したが、それは我々にも言える教訓。
こぅ

こぅ