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死者からの手紙のkyokoのレビュー・感想・評価

死者からの手紙(1986年製作の映画)
4.5
誤って出された核兵器発射命令と処理が遅れた7秒間。
黄土色に染められた死の世界と防毒マスク。
まるで金庫のようなドアで遮られたそこは、どうやら博物館の地下倉庫らしい。
具合の悪い妻に寄り添いながら、行方が分からない息子に手紙を書いている老学者。
明暗を繰り返す足こぎ発電機。日をあらわす「薄明」という単位。水浸しの図書館。枯れ枝のクリスマスツリー。

その世界観に圧倒された。

「行け、力のある内に歩いて行きなさい。歩いている限り希望はある」
子供たちが強い風に抗いながら歩く姿に思いがけず落涙したけれど、希望を見出していいのか、それともそんな甘っちょろいもんじゃないと嘲笑されるべきか思い惑ったのは、この映画が完成したわずか1ヵ月後にチェルノブイリ原発事故が起こったと知ったから。

できればもう一回観たかったな。

ロケがおこなわれた場所はレニングラード効外のクロンシュタット堡塁に残っていた戦後の廃墟だという。本物が見せる力なり。

ロプシャンスキー監督はタルコフスキーの「ストーカー」で実習を受け、同作品の共同脚本家ボリス・ストルガツキーは今作でも脚本に携わっている。
敷居が高く感じてどうにも腰がひけるタルコフスキー(ついでにソクーロフも)。ここは腹を括って手を出すべきか(びびり過ぎ?)。
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