ふき

34丁目の奇跡のふきのレビュー・感想・評価

34丁目の奇跡(1994年製作の映画)
4.0
サンタクロースを自称する老人クリス・クリングルが現れたニューヨークが、ある「一つの問題」について行動するヒューマンドラマ作品。

本作はなにしろ、クリス・クリングルと彼が扮するサンタクロースの造形が素晴らしい。リチャード・アッテンボロー氏の演技や佇まいは、あり得るかもしれない「素のサンタクロース」を体現しているし、彼がキャシー・オリアー氏の衣装を着込んだ時のサンタクロース感は、もう本物としか思えない。このキャラクターが「本物のサンタクロースに見える」という点で、本作は成功している。
お話は原作小説にほどほどに忠実で、“サンタクロース”“クリスマス”“奇跡”といったキーワードからは予想もしていなかった方向に展開していく。しかし「サンタクロース」という題材にはある意味相応しい展開で、文字通り「夢を忘れた大人」も「夢を知らない子供」も満足できる結論を描いていると言えるだろう。

難点は、「クリス・クリングルはサンタクロースなのか」という件と、「サンタクロースは実在するか」という件が(敢えて?)混同されて語られる点と、「実はみんないい人でした」オチ。特に後者は、悪人を二人に押し付けてるようで後味が悪かった。

ところで本作は、実は「クリス・クリングルはサンタクロースである」を客観的に証明する描写がない。デパートや一家の問題を解決するのも、どこからともなく振ってくる“奇跡”ではない。しかしその距離感が、逆に「人は誰でも誰かのサンタクロースになれる」というメッセージを浮き彫りにしていて面白かった。
ふき

ふき