こたつむり

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコルのこたつむりのレビュー・感想・評価

3.8
★ 天を突くバベルの塔すらも彼の敵ではない

創作物を商業と芸術で区分する境界線。
それは“客観性の序列”だと思います。つまり、製作者自体が楽しむのか、受け取る側を楽しませることに腐心するのか。勿論、理想はその真ん中なのでしょう。

そして、本作は究極的な商業映画。
見事なまでに“観客を楽しませる”ことに重きを置き「これもでもか、これでもか」と目まぐるしく物語が展開する作品でした。いやぁ。この徹底的な姿勢は感服の限り。

特にコメディ要素が良いアクセント。
サイモン・ペッグが演じる《ベンジー》を前面に出してきたのは英断でしたね。昨今のマーベル作品でも顕著ですが、ヒロイズム精神とコメディ要素は相性が良いのです。

また、本作単体で成り立つ物語なのに、前作までの経緯を知っていれば、より一層楽しめる“奥行き”があるのも感嘆の極み。スパイ要素を際立てる小道具は最たるものでした。マスクを作る機械に懐かしさを抱き、コンタクトレンズで最先端技術を知るのです。

この手触りはまるでディズニー映画。
…なんて思ったら、監督さんは『Mr.インクレディブル』を仕上げたブラッド・バード監督だったのですね。なるほど。映画界において“ディズニー無双”である理由が判った気がします。

ただ、不満がないわけではなく。
個人的な感覚だと思いますが“尺が長い”のが気になりました。これはクライマックスの位置を見誤ったから…というのは不遜な意見でしょうか。何しろ、物語中盤のドバイで繰り広げられる展開は“手に汗握る場面”ばかり。その後の流れが蛇足と思えるほどだったのです。

でも、これは贅沢な注文ですよ。
「もっと美味しいものをくれ」という“餓鬼のような願い”なのですからね。

まあ、そんなわけで。
スパイ映画…ではなく『ミッション:インポッシブル』というジャンルを意識した作品。脳髄までとろける娯楽として、誰にでもオススメできる作品でした。

To be continued… →→→ 
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
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