ほーりー

奇跡の人のほーりーのレビュー・感想・評価

奇跡の人(1962年製作の映画)
4.4
母親が高校生の頃に観て衝撃を受けたのがこの作品。

普段は役者の名前なんか覚えたためしのない母がパティ・デュークという名前ははっきり脳みそに刻み込まれただけあって、本作のパティとアン・バンクロフトの体当たりの演技は圧巻である。

ちなみにパティ・デューク、あのショーン・アスティンのお母さんである。

見えない・聞こえない・喋られないの三重苦の障害を抱えた若きヘレン・ケラー(パティ・デューク)と彼女の家庭教師アニー・サリバン(アン・バンクロフト)が起こした奇跡を描いた感動と衝撃の傑作。

元々は1959年に初演された舞台劇で、あまりにも評判が良かったため、その3年後、演出のアーサー・ペン、オリジナルキャストだったバンクロフトとデュークがそのままハリウッドに召喚されて作られたという。

バンクロフトが「舞台よりも映画の方が大変だった」と言うだけあって本作の熱量は物凄い。

障害を不憫に思った両親によって甘やかされて育てられたヘレンは手がつけられない程の利かん坊になってしまう。

困り果てた両親はヘレンに家庭教師をつけようと考えて、障害者の学校に手紙を出すが、来たのは自身も目が不自由ながらも克服したサリヴァンだった。

最初は自信満々だったサリヴァンだったが、ヘレンの癇癪の凄さに手こずる毎日。

ヘレンにしつけと言葉を身に付けさせようと考えたサリヴァンは、彼女を甘やかす親から遠ざけて二人きりで暮らすことを決意するが……。

食事のマナーを身に付けさせようとする二人が格闘するシーンは、部屋内を縦横無尽に暴れまわるヘレンと阻止しようとするサリヴァン、この二人を必死に追いかけるカメラワークが物凄い。

音も聞こえず光も見えず……まさに闇の中でもがいているヘレンに体当たりで受け止めようとするサリヴァンのやり方は、今日の目で見るとかなり手荒な行為に見える。

だけど実際に施設で病気の弟を失い自身も地獄を見た彼女にとって、生半可な気持ちでは人は救えないというサリヴァンの強い意思が感じられる。

ついにヘレンが開眼する(本当に目が見える訳ではないですが)場面、その瞬間を逃さなかったサリヴァンは彼女の手をしっかりと握り、ヘレンの眼から一筋の涙が流れ来るシーンに心打たれた。

なおこの年のオスカーは、主演女優賞をバンクロフトが、助演女優賞をデュークが獲得と、文字通り二人が独占してしまうが、それも納得するほどの熱演でありました。

■映画 DATA==========================
監督:アーサー・ペン
脚本:ウィリアム・ギブスン
製作:フレッド・コー
音楽:ローレンス・ローゼンタール
撮影:アーネスト・カパロス
公開:1962年7月28日(米)/1963年10月26日(日)
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