このレビューはネタバレを含みます
一人部屋の中で窓ガラスに数式を書き、ガラス越しに見る外の世界。
数式を通してしか現実を受け入れようとしない数学者のジョン(ラッセル・クロウ)。
他者の存在価値を認めていない。求めるのはこの世の真理のみ。
けれど、恋人と出会って価値観が変わっていくんだよなあ。
出会い始めの頃は堅苦しいんだよね。
白いハンカチをあげた恋人アリシアとジョンのやり取り。
『幸運のお守りだと思って(持っててね)』
「幸運なんて信じないよ。
・・・でも、物の価値は認める」
なんて現実的で、そしてロマンチックなんだろうか…良いなあ。
そして、プロポーズのシーン。
「僕らの関係は一生続くのかな?
証拠が欲しいんだ、信頼できる経験的データを…」
『待ってよ、私にはロマンスへの憧れしかないわね…そうね、宇宙の大きさって?』
「無限だ、データがある」
『証明されてないわ、目でも確かめてない』
「でも信じてる」
『うん、愛もそれと同じよ』
この頃には窓ガラスには数式は書かれなくなっていて、
目の前の現実を受け入れはじめている…と思っていたけれど・・・
ここからのラッセル・クロウの苦悩の演技が真に迫る。
幻覚の対処方法としての「解」を求めつづける描写がね、もう苦しい。
『苦しみの解き方は、頭の中ではなく心の中にあるのかもしれない』
アリシアが悟してくれなければ、彼は「解」が見つからずに苦しんだままだったろうな。
そして、教壇に復帰したジョンがまた窓ガラスに数式を書くシーン。
一人部屋ではなく、学校の図書室での窓ガラス。
窓の内側にはジョン一人ではなく、大勢の教え子たち。
ジョンが他者を受け入れたんだよね、きっと。
そして、書かれた文字は「∞」
窓の外側(現実)と内側(数式を介した想像)の世界があわさると、無限大に可能性が広がるということ。
∞が画面いっぱいに映し出されたあとに、ジョンの顔、生徒たち、外の世界が写って、なるほどなあ、って。
人はひとりでは成長に限界があるし、
かといって思考を止めても然りで、
知見と想像が2つ揃うことが大事なんだと思わされる。
ラストスピーチはわかっていても号泣。
“理”を追求し続け数式を導く人生だったジョンが行き着いた「解」。
「謎に満ちた愛の方程式の中に、“理”は存在するのです」
そしてそっとポケットから出す白いハンカチ。
ジョンが辿り着いた真理とは人の愛だったということ。
観るたびに自分の原点に立ち返れる。
感謝しかない。
ジョンとアリシアの冥福を改めて祈りたい。