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昼下りの情事のakrutmのレビュー・感想・評価

昼下りの情事(1957年製作の映画)
2.8
CSでオードリー・ヘップバーン特集として放送していたので観賞。オードリー扮する音楽学校でチェロを学んでいる女生徒アリアーヌと、女遊びの激しい大富豪フラナガンの恋愛模様を描いた、ビリー・ワイルダー監督作品。

正直言って、この映画はかなりしんどかった。オードリーの相手として、56歳のゲイリー・クーパーじゃあ、いくらなんでも年取り過ぎ。おじいちゃんの域に達していると言っても過言ではない風貌にはホント参った。モノクロだからまだシワとかそれほど目立たない(でも私は気になってしまった)が、カラーだったらもっと年寄りじみて見えたと思う。ある批評に、Gary Cooper was too long in the tooth to be playing opposite the gamine Hepburn という表現があったが、long in the tooth (「年老いている」という意味の慣用句だが、年を取ると歯茎が下がって歯が長く見えるということから由来する表現)はまさに言い得て妙。

もちろん、年齢差があること自体が問題なのではなく、そこに必然性が全く感じられないのが問題なのである。アリアーヌがなぜ初老の男性に恋をしたかがきちんと描かれていないので、穿った見方をすれば、金目当てに近づいた下心のある女性に見えないこともなく、それがオードリーを下品に見せてしまっている感じさえしてくる。『ローマの休日』で見せた気品や知性(『ローマの休日』はそもそもそういう設定なのだが)が感じられないのが本当に残念。オードリーの美貌と雰囲気で最後まで観ることができたが、自分にはかなり辛かった。

また、ビリー・ワイルダー監督の良さもあまり出ていない映画でもある。コメディとしても中途半端だし、ラブ・ロマンスとしても中途半端。良かったのは、アリアーヌの父親を演じたフランスの俳優モーリス・シュヴァリエと、フラナガン氏にどこまでもお供する楽団くらいか。なお、ビリー・ワイルダー監督がフラナガン役として最初にオファーを出したのがケーリー・グラントだそうだが、ケーリー・グラントだって当時53歳なので、同じようなもの。次にオファーを出したユル・ブリンナーだったら、30代なので問題なかったのに。

ちなみに、本作にはヨーロッパ公開版とアメリカ公開版の二種類があって、アメリカ公開版では、ヨーロッパ公開版にはない、二人の不道徳な関係をエクスキューズするような父親のナレーションが入っているらしい。(今回見たのは、ナレーションが入っていたのでアメリカ公開版と思われる。)ビリー・ワイルダー監督はナレーションを挿入するのに反対したそうだが、当時のアメリカはそれだけ不寛容だったということか。
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