空港でのエスカレーターと銃撃戦前のエスカレーターがベスト。ハードボイルドな劇画(漫画)を、そのまま映像化したような作品。それが成功しているか失敗しているかは人それぞれだが、こういった試みで日本映画にチャレンジする作家が絶滅したのは寂しくはある。
喉が枯れるまで叫んで血だらけで暴力して、過去の哀しみを背負ってブツギリの悲劇。寸止めでニヤついているような映画には決して残せない「傷痕」。石井隆の作品に触れると、表現とは本気でぶつかれば何かしら響くのだと、毎回学ばされる。
葉月里緒奈は、その時代のやんちゃな振る舞いからの懲罰的な出演だと思うが、誇りにしてよい一本。強者な主演者に必死で食らいついている。高島礼子が最高。今からでも銃をもたせて『グロリア』みたいな映画を誰か早く撮るべき。女性たちが撃ち合う映画もしっかりと残している石井隆。これも忘れてはいけない作家性の一つ。