"愛の不毛 三部作"のひとつと後に言われ第11回ベルリン国際映画祭(1961)にて金熊賞を受賞したMichelangelo Antonioni監督作。
撮影のGianni Di Venanzoのセンスなのか、アントニオーニ監督のセンスなのか?どちらか分からないが反射職人といっていいほど、やたらと窓ガラスの反射を使うのだが、それが見事。いま、あまり見かけない表現方法で新鮮さを感じた。
ド頭のオープニングでのタイトルバックが素晴らしい!高層ビルでお馴染みの窓拭き用のゴンドラを使って撮影しているのだと思われるが、ゆっくりと下へ降りて行き、カメラは内側のビルの窓ガラスを映している。その窓に反射してミラノの街並みが映っているのだが、階ごとによってブラインドだったり、カーテンだったりで、反射の色味や見え方が変わるのがまたオモシロイ。
他にもちょくちょく反射で見せるショットがあるので、監督か撮影監督の好みなんだろう…
十代の頃に"Blow-up" (1966年)をJeff Beck時代のThe Yardbirds目当てに見たが、映画自体はチンプンカンプンで退屈だった記憶しかないために、アントニオーニ監督の特徴を語れるほど知らない。
それから20年以上を経て、映画の好みや見方も変わってきたと思っていたが…アントニオーニ監督の印象は当時と全く変わらない。ただただ退屈な2時間であった。
ハイライトは、このショットのみ!
Jeanne Moreau演じるリディアをパーティー会場から連れ出す男。
○車
雨が車のフロントガラスの視界を遮る。車内にはリディアと男が乗っている。ゆっくりと進む車。車が街灯から離れると車内は真っ暗になり、リディアと男が黒いシルエットになる。車が少し進むと、また街灯に近づき車内の様子が見えてくる。これを繰り返す。
カメラは車の外から撮っていて、二人は何かを話しているようだが、ここでは雨の音しか聞こえない。車は、実際にはほんの少ししか動いてないのだが、たぶん照明を入れたり消したりして、動いているように見せているのだと思う。
ここのショットが目茶苦茶カッコイイ!
車内の会話を入れなかったのも大正解!
あとは…愛の不毛というより不毛な時間が延々と続く…
病院へお見舞いにきたMarcello Mastroianni演じるジョバンニが帰り際に、破廉恥な女に狙い撃ちされる。これも狂気の沙汰としか思えないのだが…一体なんなの?何がしたかったの?セックスがしたいだけ?一切これには何の説明もない。
そのあと嫁のリディアに、
ジョバンニ
「乱暴に抱きつかれて凍りついたよ。一瞬、僕が彼女の欲望を煽ったように思えてね」
自意識過剰…。思い上がりも甚だしいが、その顔ならそうなるわな。自分もノリノリだったくせにこの言い草はアンジャ渡部か!天狗になってる様は渡部のよう。バレる前は、平気でこんなこと言ってそうだもんな…
街を彷徨う妻。
廃墟になったところで、泣く幼子。
こっちいらっしゃいって言っただけで、放ったらかし。放置して置き去り…ヒドイ。このシーンに子供いるか?いらないだろ?
妻は何がしてくて彷徨っているのか…?目的が見えない。いや目的は、ないんだよね…そこに物語も何もないから、ただおばさんが歩いてるだけの画を延々と見せられても…眠くなる。旦那と一緒にいたくなくて、街を彷徨うことによって刺激が欲しいんだろうけど…
若者の喧嘩を見て、止めに入ったり…
ロケットの打ち上げを見たり…
アイズワイドシャット的なこと?構造は近しいと思うのだけど、そこに至るまでの道のりと見せ方がまるで違うから、同じ彷徨うでもニューヨークの街並みを彷徨うトム・クルーズとは、見てるこちら側の興味の引き方が全く違うッ!!なぜアイズワイドシャットの方には引き込まれるのか…同じようなことを描いてるはずなのに…作家とドクター。どっちも金持ちでいい暮らししてて、パーティーに参加するって構造は同じ。
なのに全然オモシロクナイ…。
ジョバンニ
「楽しみがなければ人生は楽かも」
リディア
「持論?」
ジョバンニ
「教訓だよ。持論などない」
楽しみがなければ2時間も集中力もたないよ!なにか楽しみを設けてよ!
この夫婦自体がロボットみたいで、まるで人間味がなく全く楽しそうには見えない。
嫁と一緒に参加したパーティーなのに、余裕で他の女とキスするジョバンニ。この辺もねアイズワイドシャットに似てる…ニコール・キッドマンはキスしなかったけど、パーティーで出会った男と、ほぼキスと同義語の距離でダンスを踊る。
○富豪の庭
突然、雨が降ってきて途端に雰囲気が増した!
なにか起きそうな不穏さと、雨でテンションを上げてバカ騒ぎしてる狂気さ。
…夜が明けて。
富豪の庭にて、互いに愛がないことを確認しながらもジョバンニが強引にファックをして終わるというのもアイズワイドシャット構造と似てると思うのだが…
愛の不毛というより不毛な時間を過ごしてしまった…