円柱野郎

グラン・トリノの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

主人公は差別発言を繰り返すいかにも偏屈な爺様だけど、イーストウッドの風貌やその演出も相まって憎めないキャラとしての魅力がある。低い唸り声をあげて怒りを腹にため込んでいる孤独な序盤、隣人とその一族にかすかな親近感を覚えていく中盤、そして彼らを救うために決断する終盤。その話の積み重ねが見事で、隣人であるスーやタオに対する心情が観客にダイレクトに伝わってくるんだよね。だからこそ最後の決断と行動には心を強く揺さぶられる。
終盤の事件からエンディングはまさにキリストのイメージであり、自身の罪を背負っての自己犠牲そのもの。イーストウッドのイメージからすれば立ち向かうシーンまでは西部劇だから、血の復讐こそその起こりえそうな展開だけど…主人公はそれを選ばなかった。でもそれは反戦とか非暴力とかそういう大仰なテーマでなく、もっとプライベートな、主人公のスーやタオへの遺産なんだろう。主人公からタオへ、グラン・トリノという物質とともに、彼への未来に対する希望が贈られたのだという終幕の余韻がすばらしい。
笑えて、泣けて、"これぞ映画!"という映画でした。
円柱野郎

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