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機動警察パトレイバー2 the Movieのfujisanのレビュー・感想・評価

4.8
『今なお色褪せない、映画的アニメーションの傑作』

東南アジア某国に派遣された自衛隊。武装勢力に包囲された危機状態で発砲許可を求めるも、答えは『こちらからの発砲は許可できない』という無情なもの。
そして、隊は全滅する。

数年後、横浜ベイブリッジが、自衛隊と思われる戦闘機が発射したミサイルによって爆破される。

疑われた自衛隊と警察は対峙。互いの政治的思惑により事態は複雑化し、東京の街は徐々に内戦の様相を呈してくる・・・というポリティカル・サスペンスで、政治と軍の雰囲気は、まるで、ゴジラが登場しない「シン・ゴジラ」。



本作はオールタイムベストの上位に入れていて、今まで20回以上は観ているのですが、いまだに観るたびに新しい発見がある作品。今回、塚口サンサン劇場さんが一週間限定でスクリーン上映してくれて観に行ってきました。

最近、今敏監督の「パプリカ」や「千年女優」がリバイバル上映されていますが、本作も、今敏さんが「パーフェクトブルー」を監督する前、押井守監督のもとで作画・レイアウトを担当していた作品。

パプリカのfujisanの映画レビュー・感想・評価 | Filmarks映画
https://filmarks.com/movies/17571/reviews/157191753

押井守監督は本作の制作にあたり、東京の街を徹底的にロケハン。
特に、入り組んだ水路から見上げる東京の街を撮影するのですが、そのロケハン部隊に同行していたのが今敏さんでした。

ローアングルから見上げる東京の街は、普段見ている東京とは別の顔を見せてくれ、群像劇の描き方も独特。監督は今敏さんに全幅の信頼を置いていたそうですが、確かに本作でも非凡な才能を感じます。

本作はパトレイバーをまったく知らなくても大丈夫な作品なので、今敏さんの過去作を知るという意味でも、オススメの作品です。


サイバーテロを組み合わせた戦争は今まさにウクライナなどで起きている現実であり、雪の東京で起きる軍隊によるクーデターは『二・二六事件』のよう。

30年前に描かれた、過去と現在と未来のリアル。

今観ても間違いなく、オールタイムベストの名作でした。
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