Masato

血と砂のMasatoのレビュー・感想・評価

血と砂(1965年製作の映画)
4.4

岡本喜八作品。第二次世界大戦の日中戦争、熱血軍曹が音楽学校を出たばかりのポンコツ少年軍楽隊を率いて砦を奪還すべく奮闘する戦争映画。

めちゃくちゃ評判が良かったので鑑賞してみた。最初はどうなんだろ…と思っていたが、途中から右肩上がりに面白くなっていき、最後には握りこぶしを作りながら画面に夢中になっていた。ハラハラドキドキのミリタリーアクション、熱き軍曹の想い、少年たちの青春…笑って泣けてしっかりと反戦。エンターテイメントに溢れた素晴らしい傑作だった。

こんなに娯楽として完璧な作品を日本が1965年に作っちゃってたのか。それは時代によって変容する映像などの表面的なものではなく、人を楽しませて心に刻み込まれるような創意工夫の詰め込まれ方が素晴らしい。スターウォーズを見たときくらいの完璧すぎて文句が無さすぎる出来。

ポンコツスポーツチームのサクセスストーリー的な要素をドストレートな戦争映画に組み込んで、ハードすぎずソフトすぎない古今問わず人気になる娯楽映画に必然な作りが見事。ただ組み合わせただけでなく、かつて一時期は生活の一部であった戦争だからこそ合わせられたものだし、両面を見せていくことでコントラストを作っていき、ラストの素晴らしいシーンがより印象的なものとなっていた。韓国映画がまさにこんな感じ。「戦火の中へ」と似ている。

ラストシーンが本当に良かった。この物語にしてそうあるべき最高の幕引き。

戦争は何も生まないし、悲劇しか起こらないことを痛快に喜劇として語る。戦いたくないのに戦いに巻き込まれていき、そこで若い命が失われていくやりきれなさはいたたまれない。戦争が生む娯楽的な楽しさと二度とこんなことは起こしてはいけまいと訴える切実さの両方を兼ね備えていて素晴らしい。
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