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終電車のakrutmのレビュー・感想・評価

終電車(1980年製作の映画)
3.7
ドイツ占領下のフランスを舞台に、上演を続けることでささやかな抵抗を続けるモンマルトルの小劇場の様子や、逃亡したユダヤ人の夫の代わりに劇場を切り盛りしている女優マリオンと共演者のベルナールの恋愛を描いた、フランソワ・トリュフォー監督の晩年のドラマ映画。俳優ジャン・マレー(ベルナールのモデル)の自叙伝や占領下での劇場の人々のエピソードを元に、マリオン役にカトリーヌ・ドヌーヴを念頭において、トリュフォーが脚本を作り上げている。

トリュフォー作品の中では最も興行成績が良かった大ヒット作である。個人的には、そこまで素晴らしい映画とは感じなかったが、この時代の雰囲気(ナチス・ドイツに占領されたことによる屈辱感や息苦しさと、それを忘れようと劇場や音楽に没頭しようとする市民、映画の題名もここから来ている)が伝わってくる点は味わい深かった。特に前半に流れるシャンソンは印象的だし、地下室への潜伏も実際に行われたようである。一方で、マリオンとベルナールの恋愛のエピソードはやや唐突な印象を受ける。最後どうなったかを描かないという演出はさすがだが。ちなみに、少年ジャコのモデルはフランソワ・トリュフォーであり、彼が水をやっているのはタバコである。
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