前方後円墳

とらばいゆの前方後円墳のレビュー・感想・評価

とらばいゆ(2001年製作の映画)
2.0
中倉彰子、宏美姉妹をモデルとした女流棋士とその夫、恋人とのラブ・コメディ。
家庭内でのドタバタ劇と将棋をさす勝負時の地味な空間ギャップが激しく、奇妙なテンポをもつ作品。しかも本城麻美(瀬戸朝香)の暴君さながらのわがままとそれに翻弄される夫、宮前一哉(塚本晋也)のやさしさというかダメっぷりが強烈な印象を与えてくれる。とにかく激しい喧嘩が見もので、それぞれの言い分がそれぞれ理があるのだが、結局どれもこれもそれぞれの贅沢な言い分であったりもする。そのやりとりに笑いと共感がうまく詰め込まれていて、観ているほうはその流れにうまく入っていける。だからこそ、下地がしっかりしているので、地味な将棋勝負もその真剣さを感じ取って、ほどよい緊張感を味わうことができるようになっている。
が、麻美の妹、本城里奈(市川実日子)とその彼氏である矢島弘樹(村上淳)が姉夫婦のところに意味なく出入りしていることや、クライマックスでの麻美のものわかりのよさなど、ご都合主義的な不自然さがいくつか感じられるのが残念だ。コメディというわりに真面目に展開する物語なので、その点で損をしているようにも感じた。