Rick

トップガンのRickのレビュー・感想・評価

トップガン(1986年製作の映画)
3.6
 10数年くらい前、F-14がトムキャットの別名を持っていることなど知らない時代に一度見たときは、ただただ「戦闘機が飛んでいる」以外の印象が残っていなかった。物語の流れも一切覚えていないし、克服すべき障害や倒すべき「敵」がなんだったのかも思い出せない。いわば、何についてのお話なのかが全くわからないままだった。久しぶりに見てみると、案外当時の印象は間違えていなかったような気もする。一方で、大きな盲点があったのも事実。トム・クルーズのアイドル性を見落としていたのだと気づく。
 よく言えば王道、悪く言えば紋切り型以外の何物でもない、無謀な若い青年が恋や友情に恵まれながらも、挫折を経て成長するだけの話だ。必要な情報はセリフで全部説明されるし、落ち込む時はこれでもかと言うほどたっぷり落ち込み、ニヤける時はとことんニヤける。劇伴も3パターンくらいしかないのかと言うほど単調な気もする。敵らしい敵も出てこないし、皆がピート・マーヴェリック=トム・クルーズを立てるためだけに存在している。空中戦の相手であるミグ戦闘機でさえ、ざっくりとした冷戦のロシアイメージを借用しているだけ。ここまで捻ることなく、ジュブナイルに振り切ったのは、ひとえに戦闘機とトム・クルーズをカッコよく見せるための映画なのだろうと思う。小憎たらしいし、無謀で協調性に欠けるけれども、卓越したテクニックを持つ主人公も、トムの愛嬌があればこそ魅力的に感じる。
 画面の全体に黄色とオレンジのグラデーションがかかっているため、映像の独特さが際立つ。
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