けーはち

月に囚われた男のけーはちのレビュー・感想・評価

月に囚われた男(2009年製作の映画)
3.4
デヴィッド・ボウイの息子であるダンカン・ジョーンズ監督作品。近未来、ただ1人孤独に耐え、妻子と再会する日を心待ちにしながら、月の裏側で主要なエネルギー資源ヘリウム3を採取し地球に送り続ける宇宙飛行士サム・ベル。3年の契約期間満了が後2週間に迫ったところ、体調を崩し事故に遭う。そんな彼の前に現れたのは──究極の孤独の中で過ごす宇宙飛行士を題材に描く、SFスリラー映画。

★究極のブラック労働

牛丼チェーン店のバイトですら1人での店番はあり得ないのが今時は常識。ましてや月面基地に1人きりで3年はねーよ……というのが正直な第一印象。

もちろん、彼に何かあった際のバックアップは存在しているのだが、実はそれは……というのが本作のギミック。比較的序盤~中盤でそれをバラしてしまい、その後ひねりもなく、淡々と終わってしまう。

抜けの良い娯楽性や起伏のある物語性もないが、自分の人格の同一性に確信が持てなくなる恐るべき画一的労働というものに対する強い批評性を感じる作風。ほぼ月面基地セットの中で行われる1人芝居の低予算映画なのもむしろ閉塞感があってテーマにぴったりだ。