陰謀論者X

1984の陰謀論者Xのネタバレレビュー・内容・結末

1984(1984年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作未読、この歳になっての初鑑賞。

1948年に書かれたジョージ・オーウェルのディストピア小説が原作だが、我々が生きるこの日本がまさにマスメディアの偏向報道による思想統制の真っ最中であり、中国や北朝鮮などは映画を地で行く人権侵害の拷問を現在進行形で行なっている事実を否が応にも再認識させられてしまう恐ろしい映画だった。

1950年代に起きた核戦争によって荒廃した後に復興した世界を三分する超大国オセアニア・ユーラシア・イースタジア。真理省に務める下級役人のウィンストン・スミスは過去の記事を改竄するのが仕事だが、オセアニアを支配する一党独裁の政党が押し付ける「善」に反発し、人間らしい堕落(生き方)を求める男だった。恋文を手渡してくる年若い同僚のジュリアと人目を憚って郊外の森で逢引してファックしたり、24時間つけっぱなしで大写しになった党指導者ビッグブラザーがじっと見据える双方向の監視装置「テレスクリーン」から見えない角度の部屋の隅で日々思った事を日記に綴るのだが、wikiによればこの行為はこの世界では極刑に相当する思想犯罪なのだという。自身の思考を持つ事自体を禁ずるという恐ろしさ。

オセアニアのヒエラルキーのトップは人口僅か2%に相当する党執行部(上級国民)、その下にスミスが属する人口13%に相当する党外局の中間層があり、その下には人口の85%に相当するプロレタリアと呼ばれる被支配階級があるのだが、wikiによれば『プロレフィード(Prolefeed、直訳すると「プロレの餌」)と総称される娯楽(酒、ギャンブル、スポーツ、セックス)は許可されているが教育はされず、識字率も半分以下である。多くはテレスクリーンさえ持っておらずそれゆえ監視もされていないが、党はプロレ階層単独では社会を転覆させる能力のある脅威であるとは全く見ておらず、動物を放し飼いにするように接している。』とあります‪……‬。この支配構造、東西を問わずこんな社会になりつつありますよね。人間の劣化と堕落が驚くほど急速に進行していると思うのは自分だけでしょうか。

党執行部は中間層が被支配階級と団結して革命を起こさないようにテレスクリーンによる常時監視と密告社会と同調圧力で自由な発言をさせなくして、人間同士の繋がりを断ち、「二分間憎悪」で怒りを高めて支配しやすい社会構造で雁字搦めになっている姿はまるで今の日本ではないかと恐ろしくなりました。新聞やテレビでは偏向された情報ばかりが垂れ流され、SNSで自由に発言していると思われるかもしれませんが実際にSNSでの言論統制はあります。

終盤、スミスが信頼を寄せていた古道具屋の主人の手引きでスミスとジュリアは思想警察に包囲逮捕される。そして、スミスが一縷の望みを託していたレジスタンスへの手引きをした真理省の高級官僚オブライエン(リチャード・バートンの演技が怖い)が囮でスミスをハメていた事実。その後の苛烈な肉体的・精神的拷問をする時に静かに言い放つ「2+2は5にも3にもなる」は怖い。黒を白と言う事が横行する日本のマスメディアも一体誰の意向を汲んで、そんなデタラメを言い放ち続けるのだろう。自国の史実を封印し、子供たちに自虐史観を教え続ける事は異常なのだと知らねばいけない。

スミスは「自由とは、2足す2は4だと言える自由だ。それが認められるなら、他のこともすべて認められる」という。党が言う事は全て正しいという二重思考を強制され、飲み込まされた上でありもしない行為への懺悔をし、極刑を受ける日を待ち望むバーのテーブルに「2+2=」と書くスミスのように、我々日本人一人一人の力は微力かもしれないが、この国に民主主義がまだ機能している限りは選挙でそれを覆す事が出来るのだと信じたい。皆が正しい判断で、正しい議員を選出すればこの国はまだ立ち直れると信じたい。そう思える映画だった。
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