Nasagi

海の牙のNasagiのレビュー・感想・評価

海の牙(1946年製作の映画)
3.6
『禁じられた遊び』のルネ・クレマン監督による、潜水艦を舞台にした心理サスペンス。
撮影監督がコクトー版『美女と野獣』のアンリ・アルカンということで気になって観た。
あと個人的にすきなマルセル・ダリオが出ていた。

大戦末期 1945年の4月、ある任務をおびて南米へと向かうナチス潜水艦内部の様子を、拉致されたフランス人医師の視点からえがく、という形になっている。

せまい艦内にはさまざまな国籍の人が密集しており、主人公を除いて皆いちおう親ドイツという同盟関係にあるものの、決して一枚岩とは言えない。
そんな所に無線で「ヒトラー自殺、ベルリン陥落」の報が入ってくるのである。

威を借るための虎をなくし、戦犯になった狐たちは、それぞれどんな反応を見せるのか。

終戦の瞬間というと、ふつうは歓喜なり安堵なりといった感情を描写するだろうに、そこを敢えて、人間のもっとも意地の悪い部分が出る場面として描き出した点がこの映画の見どころだ。

コーヒー工場での殺人の場面は、殺す所を直接見せないことで、かえって印象に残るシーンが生まれるという好例の1つだと思う。
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