障害者をテーマにした作品となると、描き方や扱い方がどうしてもナーバスになりがちだけど、この映画は本当にカラッとしてサバサバしている。
冒頭の運転シーン、深刻な音楽が流れて黒人の青年と髭をはやした白人の不安そうな表情…
あ、これ重い映画だ…と思った瞬間、急発進とともにガラリと変わって、名曲「セプテンバー」が流れるノリノリのオープニングで幕開けする意地悪さ。
Ba de ya~~♪
何かあれと同じ。植木等の名曲「ハイ!それまでよ」を彷彿させるような裏切りっぷりが見事。
映画は実話を元にした作品。
不慮の事故で首から上しか動かなくなった富豪フランソワ・クリュゼと、介護士として男に雇われた貧民街出身の黒人青年オマール・シー(卑猥な名前だ)の交流を描く。
障害者だろうが何だろうが、普通の人と同じように接するシー(早い話が扱い方が乱暴)。でもそれがクリュゼの憂鬱な心境に変化をもたらす。
親切な行動は必要ではあるけれど、あまり度が過ぎると、かえって自分と相手の壁を作ってしまうのはよくあること。
確かに周囲の手助けがなければ、生きていけない障害者も沢山いるのだが、何でもかんでも優しく硝子細工を扱うかのように接するのは、これまた健常者の怠惰のように思う。
やはりきちんと相手に向き合うことではないかと考えさせられた。大変難しいことなのだ。
「障害者ってどこにいるか知ってる?置き去りにした場所だって」
こういうきっついジョークでも腹から笑っている二人には、全く隔たりが感じられない。
さて、冒頭もそうだけど、本作は全体的に音楽の使い方が上手い。介護士に成り立ての頃と終盤の頃では、シーを取り巻くスラム街に流れる曲に変化がある。
クリュゼだけではなく、シー自身も心境に変化があったことが、静かな淡々として演出だが、スマートに表現されていると感じた。