るる

ナイン・ソウルズのるるのネタバレレビュー・内容・結末

ナイン・ソウルズ(2003年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

リバイバル上映で映画館で観ることが叶った作品。初見はDVDで。

見るたびに泣けてしまう。音楽がカッコよすぎる。

どこか漫画的な印象も受けるが、無性に…掻き立てられる。泥臭いのに、不思議と爽やかな映画。

脱獄犯たちのロードムービー。
原田芳雄が「いー奴なんだよ、だから間違えちゃうんだよなあ」という台詞は、そのまま9人に返ってくるように思う。
不器用で、愛を求めているのに、どこへ行っても、うまく生きられない彼らが切ない。

「逃げることです」「アンタみたいに、できりゃあね」「誰にでもできますよ」

マメ山田といえば、豊田監督作品の常連。監督がメガホンを取った、アジアン・カンフー・ジェネレーション『君という花』MVにも登場している。日本の宝といえる個性派俳優のひとりだと思う。

板尾創路演ずるAV王のエピソードが素朴で良い。「…また、丸坊主やな」という、台詞が、なんとも切ない。
「なーんちゃって」「ちゃーんなって」千原ジュニアが松田龍平を自転車に乗せる姿は、兄弟のように微笑ましい。

空に浮かぶ真っ白な雲を見上げて「魂みたいだ」と呟く。
さらりと、しかし対比的に配置された各キャラクターの事情と、何気ない台詞が積み重なり、怒涛のクライマックスに向かう。巧いとは言えないが、よくできた脚本だと思う。
「遅刻は絶対にゆるさーん!」「1分でも遅れたら置いてくからな」「遅刻すんな!」「もうちょっと待て。もうちょっと待ったっていいだろバカ野郎」「おまえら遅刻しすぎなんだよ、バカタレ!」
エンドロール後、空色に塗られたバンから降り立った、真っ白な9人の魂は、どこへ行くのか。

原田芳雄演ずる子殺しの脱獄犯・虎吉と、
松田龍平演ずる父殺しの脱獄犯・ミチルの共演に胸が熱くなる。
鈴木杏、松たか子を始めとする、女優陣も良い。
芥川賞作家となった芸人・又吉がなぜか出演している。
驚愕の豪華キャストといえる。

豊田監督には、是非またこんなヒリヒリするような映画を撮ってほしい。
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