GUMI

ダウンタウンヒーローズのGUMIのレビュー・感想・評価

ダウンタウンヒーローズ(1988年製作の映画)
3.7
確かに「ダウンタウンヒーローズ」だ。
男臭いが美しい話だった。

薬師丸ひろ子目当てだったのに観てみると 石田えりに魅せられた。




戦後 間も無い1948年の松山高校を舞台に、学制改革を前に 当時を活きる若者の煌めきと儚さを描く。
当時ならでは過ぎる慣習シーンも出てくるのでどういうものなのか理解できなかったものも正直あった。

撮影場所はテレビでもよく見る、長〜〜〜い廊下で雑巾がけレースをするので有名なあの小学校とのこと。



全編通して男臭〜い旧高校生の生徒らの信念が味わえる。
国に裏切られた記憶が濃かったであろう当時、彼等はその反省から 自ら行動を起こさねばという義務感もあっただろう。
ここではそれが世相と女性を通して描かれている。
前半は遊廓から足抜けし ヤクザに追われる咲子を男子寮の生徒たちが匿う。


女というだけで鼻血が出ちゃう純朴さ加減なんですがそれもそのはず。
咲子は体つきは艶かしいのに傷ついても尚 心は何か美しいものを信じていたい幼さをも併せ持っている…こりゃ 守ってやろうと思いますよ。

「自分を大事に生きなさい。悪いのは君じゃない」
と咲子を励ました言葉、宝物のよう。
父が戦地から帰って来ない生徒もいるような時代だからこそ、自分の人生を生きられることの重みを感じるセリフ。

咲子を追って男子寮まで攻めてきたヤクザに勇気と知恵で向かっていく生徒らの姿、バンカラであり純粋。



後半は記念文化祭の演劇のヒロイン役に 他校のマドンナ·中島房子をオファーすることから始まる恋慕を中心に描かれる。

可憐という言葉が本当によく似合うマドンナ薬師丸ひろ子…を食ってしまう存在感の食堂のおっちゃん渥美清(笑)

自分なりの生き方が手に入ったことで反って失うことを恐れ 伝えられなかった気持ち…お互い好きなのに結ばれない刹那。
どうにもならないと気付きながらも伝えずにいられない不器用さそのものが彼の信念を貫いているようで、美しい生き方だと感じた。

当時は悔やんだろうが、「そんなことがあったな」と、綺麗な記憶のまま歳を取っていくのも人生の味になりますな。



戦後 間もなくまだ貧しい時代に自分を導く道となるのは 仲間と信念だったんだな。
自分に嘘がつけない真っ直ぐな彼らに心が打たれた。
ダウンタウンヒーローズな彼ら、格好いい。
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