レインウォッチャー

探偵物語のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

探偵物語(1983年製作の映画)
3.0
主演:薬師丸ひろ子&原作:赤川次郎、の座組は『セーラー服と機関銃』に次いで二本目。赤川次郎は昔に何冊か読んだ記憶がありますけれど、だいたい「テキトーな話」てのが悪口にならない作家さんですよね(悪口です)

お嬢様JDが、よれよれスーツのポンコツ探偵と出会って殺人事件を解決したり、大人の世界の入り口を知ったり、恋に悩んだり。

『セーラー服~』から成長した薬師丸さんはすっかり垢ぬけて、ヒヨコみたいなお顔とボブカットが可愛らしい。
そのぶん、『セーラー服~』にあった野性味みたいな汗の魅力は失われており(これは映画の撮り手が変わっていることも大きいのだけれど)、漂白されたお人形としてそこに居る。

箱入りだった主人公が直面する大人の世界は、ベタながらセックスに重ねられている。関わる人々(松田優作演じる探偵の辻川含め)は不倫やワンナイトといったインモラル気味な性にかまけ、主人公は時に「人間の声じゃないみたい」なんて評したりして距離を置こうとする。

そんな中で際立つ彼女のイノセンスは、『セーラー〜』で保護者同士(佐久間とマユミ)のセックスを目撃して「汚いよ…」と諦めるように呟いた頃から逆に巻き戻って少女化したようにも思える。
一方で、最後には「よごれたおとな」の一員であるはずの辻川にプラトニックなまま心を捧げたりするわけで、これをオッサンに都合が良いとか古臭い処女信仰とか評することも可能だろうけれど、ある程度説得力のある不可侵のオーラを薬師丸さんが放っているのも確かだ。

ところでヤクザの怖い人を財津一郎が演じているのだけれど、女を荒っぽく抱こうと指を詰めようと、次の瞬間には「タ・ケ・モ・ト・ピアノ~♪」と歌いだしそうでぜんぜん集中できない。これは昭和末期~平成前半の近畿圏にのみ分布した奇妙な風土病として知られている。

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テーマ曲が春めいていて良い。