ベビーパウダー山崎

アニエス・Vによるジェーン・bのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.0
ジェーン・バーキンの生い立ちから現在(80年代)までを映すドキュメンタリー的でありながら、それぞれのキャラクターを演じる女優バーキンとして物語のなかにも閉じ込め、そのリアルとフィクション引っ括めて「映画」にしてしまうアニエス・ヴァルダが鬼。バーキンに対して放っておかれると寂しくて死んでしまう兎のように接していて、有名人だからとチヤホヤするわけでも、その有名税を憐れむわけでもなく、できるだけ誠実に、友人としてまっすぐ向き合う「リアリスト」ヴァルダ。市井の人々でも名のある女優でも日常を映す姿勢に変わりなく、上も下も当然ない。押忍!勉強になります!
「家族で映画を撮れたらいいよね」的な、バーキンが適当に思いついたようなあらすじをふわふわと話していて、そのとりとめのない物語にしっかりと肉付けしていき『カンフー・マスター!』を創り上げてしまうヴァルダの剛腕。本作と『カンフー・マスター!』は表と裏、どこかで二本立てするべき。
「誰と芝居したい?」と聞かれたバーキンがジャン=ピエール・レオの名を挙げ、次のシーンではすでに共演して熱烈なキスをかます流れ。ジャン=ピエール・レオを呼び出すのも簡単ではないだろうし、俺はバーキンを寺島しのぶぐらいの役者かと思っていたが、ヨーロッパの宮沢りえに修正しておく。
終盤での倉庫の撃ち合い(アクション)は何処となくゴダールっぽい。センスあるんだよなヴァルダ。ジャンヌ・ダルクの火あぶりで物語を閉じ、バーキンの40歳の誕生日を祝して終わる。映画に愛があるよ。