針

砂の惑星の針のレビュー・感想・評価

砂の惑星(1984年製作の映画)
3.0
にわかにデューン付いた勢いで他の関連作も観ちゃおうと思い。

失敗作だというのは聞いてたのですが確かにこれは自分も相当厳しかったです……。失礼だけど、超往年のしょぼいSF映画的なセット&特殊効果だなぁとは思ってしまった。どこを取っても地球で作って撮った絵にしか見えないのが異世界SFとしてつらすぎる。ヴィルヌーヴ版を観た後だとなおさら……。

これはデヴィッド・リンチのせいもあるのかもしれないけど、どちらかというとお金や時間の無さだったんじゃないのかなぁ。そしてそれゆえにこの時代のSF映画の限界がもろに露呈してしまったのではないでしょうか。調べたら違うのかもしれませんが。

自分が観たのは長尺版じゃなくて2時間ちょいの通常版。これをヴィルヌーヴ版と比較しますと、前半1時間が『PART 1』、後半1時間が『PART 2』にほぼ該当します。
個人的には世界観描写という点では非常に物足りないけど、テンポ的にはリンチ版の前半のほうがヴィル版より正直観やすかったです😆。しかし後半はさすがにダイジェストすぎて厳しい……。

一応リンチ的な悪趣味とか異常性みたいな感じもあるけど、他の映画のごく普通の日常に猟奇が忍び込んでくる感じのほうが、自分はやっぱり彼の真骨頂かなーとは思っちゃう。

あとこれもヴィル版の話ですが、比べて見るにあちらはリンチ版のナレーション&モノローグを使った言葉の説明による進行を嫌ったようですね。それはたぶん大正解だと思うんだけど、原作未読の人間としては香料の価値とか宇宙の政治情勢とかは正直ヴィル版ではよく分からなくて、リンチ版のおかげで補完された部分は意外と多かったりしました。
それと戦闘シーンでは、ポール主導による気を放つ銃みたいなものがメイン武器として使われていて(霊丸?)、するとヴィル版の剣主体の戦いは監督の工夫だったのかなーと。あれのおかげで中世感は高まってる気がしましたが。
★追記。どうやら銃みたいなやつこそリンチ版のオリジナルのようですね。原作にないのにあれをぶっ込んでるのはちょっとすごい……

○良かったところ
・冒頭に出てくる脳味噌のおじさんみたいな人はかなり魅力的でした。
・スティングが演じているフェイド・ラウサはちょっとチンピラっぽいんだけど、これはこれですごくいい佇まいのキャラクターだなーと自分は。
・ヴィルヌーヴ版ではまだ生まれていないポールの妹のアリアがちっちゃい魔女っ子みたいでかわいい! でも怖い! 残酷!
・終盤で皇帝たちが座って操作する回転式の銃座がなんか面白かったです。てか陛下自身が座るんかい!

あとこれはヴィル版でも思ったことだけど、砂漠の星に救世主が現れるという物語はやっぱり聖書っぽいよなぁと。主人公は一回死を克服しますしね。(キリスト教に限らず、ユダヤ教とかイスラム教とかそのへんの根元にあるメシアニズムと言ったほうがより実際に近いでしょうか)
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