はかりしれない。
はかりしれないものは美しい。
はかりしれないものは畏ろしい。
視覚的な美しさではなく、良いものも、悪いものも、その区別すらなく全てを同等に内包した、その存在そのものが美しい。
捕食や暗闇に抱く恐怖でなく、肉体を超えて魂に直接まとわりつく、得体の知れない何かが畏ろしい。
「美しく “そして” 畏ろしい」 ではない。
「美しく “しかし” 畏ろしい」 でもない。
美と畏怖は、別個に共存するものでも相反するものでもなく、その本質として同一の存在だ。
それは諸宗教の伝える神の姿。
ヘルレイザーでいうところの究極の快楽。
畏れのあるところに美が存在する。
魂がほどかれる。
昨冬、明朝、潔いほどに寒く晴れた日、庭一面にダイヤモンドダストが煌めいた。写真に収めることもできない、その場限りの僅かな光景。
窓を通してすら十分でなく、氷点下の突き刺す外界に身を置かなければ、氷の霧に包まれた透き通った朝を味わうことはできなかった。
一体この世には、人が決して存在することのできない場所に、どれほどの美しい風景が、誰にも知られることなく広がっていることか。
はかりしれない。
いわゆる「癒し」を求めて叶う映画ではないが、この映画に癒される瞬間が人にはあるのだろうと思う。