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ブーリン家の姉妹のYouのレビュー・感想・評価

ブーリン家の姉妹(2008年製作の映画)
4.0
テューダー朝の話は、何を観ても何を読んでも、何回観ても何回読んでも、
全容が把握できねーぜ!
(主に家系図が)

聡明と野心の姉アンと
美貌と優しさの妹メアリー。

…という設定なんだが、アンも十分美人っつーか、なんならメアリーより整ってるので、脚本的にはひたすらナタリー・ポートマンの無双感あった。
スカーレット・ヨハンソンが不美人だと言いたい訳ではないが、360°端正なナタリーに対して、スカーレットは多少クセのある造形に内から滲み出る艶が化学反応を起こして完成するタイプの佳人である。(※個人の感想です)
だからこそ1度目でなく2度目の王の目に留まり寵愛を受けるメアリー役にハマり、ラブシーンには得も言われぬ濃厚な背徳感があった。

男顔負けの狡猾さで、転んでもただでは起きない奔放なアンと
女として愛されることを喜びとし、男たちの決定に従順に流されるメアリー。

この時代の女の姿勢として正道だったのはメアリーだろう。
事実、男たちに翻弄され傷つきながらも、常にパートナーには深い愛を抱き抱かれ、穏やかな老後を迎える女である。
(ところで、これだけ王室が男児に恵まれない事態に直面し、たとえ私生児でも、直系の男児を持つメアリーのもとに、何か手が伸びたりしなかったのだろうか?)
とは言え、生きてそうすることができたのは、彼女が必ずしも流されるばかりのお人形ではなく、
最終的には折れざるを得ない意思であっても表明する度胸があり、
欺瞞を嫌う良識があり、
姉を救いに奔走するひたむきさがあったからだろう。
静かに芯の強い女である。

アンは策士策に溺れた形で失脚するわけだが、
有り体に言えば男(しかも王)を焦らしすぎてブチ切れさせた女である。
願った男児は身ごもれず、自分がしたのと同じように妻の座を追われ、失脚への恐怖のあまり身内にまで手を出さんとし、そのことをおぞましく思う感覚すら失って、知能の高さと同じ分だけ深く狂っていく。
性的魅力は申し分なく携えながら、愛に対する才能がなかったのがアンである。
まるで対等であるかのように、愛と肉体をチラつかせながら王を手の内で転がして、後々どうなるか一切思わなかったとすれば、賢い女だったとは言いがたい。
娘のエリザベスの御代が花開くことを思えば、仮にアンが王妃として治世に関わる未来があったとしたら、もしかすればその血筋で見事な辣腕を振るったかもしれない。
…とも思ったが、伯父に似て理性より野心が勝つ女なので、いずれは何らかの形で自ら破滅しただろうなぁ。

大した活躍がない割に、劇中一貫してちょこちょこ顔を出すジョージの動きにイマイチ理解できない部分があったけど、原作ではゲイという設定らしい。
そうか…それなら納得だ。
それなら尚更、辛かっただろうな。

レンブラント絵画のような明暗の映像が終始美しかった。
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