こたつむり

スウィングガールズのこたつむりのレビュー・感想・評価

スウィングガールズ(2004年製作の映画)
3.9
★ 女子高生×ジャズ×田舎のあぜ道

正直なところ、最初は侮っていました。
何しろ、上野樹里さん演じる主人公は、ちょっとバ…ではなくて、ちょっと頭がわる…でもなくて、おゆるりなキャラクタ。過剰な方言も含めて、コメディ色が鼻についたのです。

でも、本作のテーマは「音にノること」。
音に耳を澄まし、リズムを身体で感じて…五感で受け入れる。だから、整合性とか現実味とか、そんな難しい理屈は要らないのです。それを具現化したのが彼女たちの“おゆるりさ”なのです。

それに本作は彼女たちの成長譚でもあるわけで。最初は音を出せなかった管楽器。コツを覚えるために四苦八苦して…たどたどしいながらも演奏する楽しさを覚えていく…いいよ、いいよ、こういうベタな話は大好き!

また、彼女たちが初々しさ満載なのですよ。
主演の上野樹里さん、貫地谷しほりさん、本仮屋ユイカさん…今では立派な女優さんとして活躍されていますが、この頃はまだ十代。若いですねえ。そんな彼女たちを見守るポジションの竹中直人さんも…うん。相変わらずの“変なおじさん”でした。

あと、細かい部分ではありますが。
主人公の妹が『スペースチャンネル5PART2』で遊んでいたのもニヤリとするポイント。劇中のある曲で「踊りで勝負よ!」なんて言いたくなるのは…たぶん、矢口史靖監督は狙っていましたね。ふふ。

まあ、そんなわけで。
音とリズムに浸るように、身体で感じる青春物語。ある意味で、デミアン・チャゼル監督の名作『セッション』の対極にある物語ですね。『セッション』が音楽への真剣さを過剰に描いたものならば、本作は演奏する楽しさを強調した作品なのです。

だから、そこで躓くと…ツラいかもしれません。ただ、本作の中で「スウィング」の意味を説明しないことから分かるように、やはり理屈じゃないのです。映画は楽しんだもの勝ちですからね。積極的にアタマを空っぽにするべきでしょう。

ただ、それでも難を言うならば。
“結果ありきの物語”と感じてしまう部分はあります。特に主人公が音楽に目覚める部分は、もう少しエピソードを厚くしても良かったと思います。このあたりは尺の問題もあるから、難しい取捨選択だとは思いますが…(削る部分が見当たりませんしね)。
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