イルーナ

ジャイアント・ピーチのイルーナのレビュー・感想・評価

ジャイアント・ピーチ(1996年製作の映画)
4.3
「そりゃあ、始めはただの夢だったのかもしれないけど、何でもそうじゃない?あのビルも、ネオンも、この街もみんな。始めは誰かが夢見たんだ。ぼくの旅も同じだよ」


小学校の授業で観た映画で、ずっと印象に残っていた作品でした。
後に本格的に映画にハマり出したころに、監督が『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のヘンリー・セリックだったことを知ったんですよね。
『バットマン リターンズ』といい、幼いころに強い印象を植え付けられた映画の監督が、後に私の好きな監督になるパターンが多くて、点と点がつながっていく感じがすごい。
特にこの作品の場合、セリックとバートンの作品なわけですし。
(しかしこの作品のVHSには『ヴィンセント』も収録されている……そのまま流しっぱなしにしてたら、その場にいた全員が落差も相まってトラウマを植え付けられていたはず)

これ今観ると、移民の話ですよね?
祖国で苦境にあった人々がアメリカに渡って夢をつかむという。
それをアレンジして子供にも分かりやすくしているわけですが、その移動手段が桃!
しかもドンブラコと海を渡っていくのかと思いきや、たくさんのカモメを捕まえて括りつけて空を飛んでいくという。
桃が空を飛んでいるというビジュアルだけでも楽しいですね。
その中で暮らしている虫たちもかわいらしくデフォルメされてて素敵。特にムカデやミミズはよくあそこまでかわいく出来たもんだ……

それでも所々セリックらしい悪趣味描写は健在で、桃のドロッとしてベタベタした質感はやたらリアルで毒々しい。画面を通して、甘ったるい匂いが漂ってきそう。
あそこまでドロっとしてたらもう腐る一歩手前なのでは?(実際ラストでは食べつくされた)
ジェームズの悪夢の描写は質感がモンティ・パイソンのアニメみたい。というかこれセリックの趣味で入れたでしょ(苦笑)
『ナイトメアー~』のジャックがゲスト出演している場面には爆笑。しかもきちんと「ジャック・スケリントン」と名指しされている(苦笑)
ついでにドナルドダックも白骨化してました(苦笑)
後、ムカデの「ニュージャージーに流されるなんてヤダぞ俺は―!」のセリフ、なぜニュージャージー?と思っていたら、そこセリックの出身地だったのね……(苦笑)

ラストもみんな夢を叶えてハッピーエンド!で清々しい。
お化け桃も虫たちも、みんな夢でなくそのままの形で実在していたというのがいいです。
普通の終わり方だったら、お化け桃は消滅し、魔法の切れた虫たちはリアルの虫に戻っていそうなもの。
大人になったら子供の夢の象徴と強制的に別れさせられる結末の話は多いですが、成長してもこうやって夢と共存できる終わり方もアリですよね。
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