Melko

ローリング・サンダーのMelkoのレビュー・感想・評価

ローリング・サンダー(1977年製作の映画)
3.6
「君を見る俺の目は死んでる」

好きな俳優が出てるわけではなくて、好きな監督が撮った作品なわけでもなく、ただ、この渋すぎるジャケットに惹かれてレンタル。
あぁ、気づかなかった。
右手は義手なのか…
あのシーンからのアレからのコレなのか…

皆さんレビューされてるように、この作品は「ランボー」であり「タクシードライバー」だった。
7年。
のほほんと過ごしてる者が想像だにしない地獄の思いを、あっというまのようで死ぬほど長い時間かけて味わう。
それはまさに、戦いの中でしか生きてることを実感できなくなった哀れで悲しい者たちの心からの叫び。

心が死ぬ

戦地からまさに奇跡の生還
でも時代は進み、妻は浮気し、知らない男が家に出入りし、赤ん坊だった息子はすっかり少年になり、自分を他人のように扱う。
戦いの中で心が死んだのに、もう一度心が死ぬ
自分の居場所がない
どんなに辛いことなのだろう
何をしてても誰と喋ってても、ふとしたことで甦るあの記憶

安全なはずの我が家で、妻も子も殺され、肩を震わせ憤る妻の今彼に「もう忘れろ」と乾いた瞳で言う
でもその心には、ポッと、復讐の灯がともる

自分をグルーピーと言ってた下心丸見えの軽そうな女は、しれっとショットガンぶっ放す強さと、髪の毛振り乱して怒る過激さと、あなたのそばにいると歩み寄る慈悲深さを持つ。突き放されて、警察に通報して復讐を止めるのかと思いきや、止めない
あら結局いい女

ずっと暗くてどこか心ここに在らずだった部下は(はちゃめちゃに若いトミーリージョーンズ!)、復讐の手助けを秒で引き受け、水を得た魚のように嬉々として撃ちまくる。生きていることを噛み締めているかのように。

そして、何もかもを失った少佐は、右手に鉤爪、左手に銃で、淡々と敵を追いかけ、追い詰め、見つけたら逃さず何発も撃ち込む。死んだ目で。
そこにはきっと達成感などない。でもきっと、これでやっと、「帰れる」から、撃って終わらせる。
「帰ろう」

始まりと終わりの音楽がとても平和で、だからこそ、そんな音楽に救われていってほしいと願ってしまう。
とっても淡々とした、静かな、そして狂気のリベンジ映画だった。

あぁ惜しむらくは、少佐が1番最初にキレて爆発するところがDVDの不具合で止まっちゃって見れなかったこと…クソぉ…
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