ぼぶ

ブレックファスト・クラブのぼぶのレビュー・感想・評価

ブレックファスト・クラブ(1985年製作の映画)
4.6
一気に80年代へ脳を直撃させる最高の4小節から、この映画は始まる。
そしてデビット・ボウイの「自分の世界を変えていこうとしてるティーンに説教しても見下しても意味はないよ、なぜなら彼らは何を乗り超えていかなきゃいけないのか、もう知っているからね…」的な、大人になった僕らにはムムムとなる、でも最高にこの映画をまとめた一言が。

舞台は、土曜日早朝の誰もいない学校。
口うるさい先生に補習授業として集められ、図書室に閉じ込められて、「自分とは何か」という作文課題を出されたのは、ガリ勉・スポーツ馬鹿・不思議ちゃん・お姫様・チンピラ…と、スクールカーストもバラバラの普段の生活では決して交わらない5人。
でも、1つだけみんな一緒だった。
彼ら彼女らは、アイデンティティの揺れ動くティーンだった。

初めは名前も知らず、生きる世界も違う5人はバラバラで喧嘩もして罵り合い、蔑みあい、ギクシャクするが…やはり閉鎖空間で過ごすうちに段々と打ち解けていく。
その様が、この短時間にキュっと詰まっているのが素晴らしかった。
これを観て、「なんだこれ、こんなうまくいくかよー!まぁ映画だもんなー!」
って言ったり思う人は、ちょっとつまんない青春を過ごしてしまったのかもな。
ティーンの頃なんて、ちょっとのきっかけとちょっとの時間で、今まで大して知らなかったやつが大切な友達になるし、目で追う事すらなかった子が大切なパートナーにだってなるよね。
そうなるのは半日もあれば簡単、ほんと一瞬なんだ。

それと同時にきっと誰もが、将来への不安感、両親との関係、打ち込むモノの有無やその打ち込むモノであがいている。
だから、初めは机に座らされててんでバラバラを向いてた5人は、いつしか心を開いて見栄を捨てて、車座になって語るようになったんだろう。
月曜日、こうやって話す?とか、なんて胸をえぐるリアルな会話なんだろう。
そうした関係性の変化が、座り位置で表現された描写が良かった。

音楽やダンスが感情の発露として使われているのも効果的だったし、飄々とした校務員さんがナイスだった。
年々生徒が悪ガキに変わってるのではなく、変わってるのは先生だよ〜とかね。

初めは、あれ期待してた学園モノとは違ってこれ密室劇なん?…と思っていたら、ついつい5人のキャラに引き込まれて、終盤はニヤニヤしっぱなし。
みんな違ってみんな良いんだ。
図書室から出た5人、階段を降りる5人には、あの頃にしか纏えない、最強の無敵感があった。
ブレックファスト・クラブ、なるほどだ。

しかし、チューを車内で見る親たちの気持ちよ。笑

あの頃の、苦味もある甘酸っぱい青春を限りなくキュッとまとめて思い出させてくれる良作。

「大人になると心が死ぬの」に胸を打たれたけど、まだ大丈夫かな。
僕も机の下にもぐりたいもん。
ぼぶ

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