和桜

市民ケーンの和桜のレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
4.5
『素晴らしき哉、人生!』『ゾラの生涯』、そして本作『市民ケーン』がモノクロ映画にハマり始めたキッカケ。何度見てもその衝撃が抜けないので必然的に評価も高くなる。
ラジオドラマの事件で一躍有名になった若きオーソン・ウェルズが、ほぼ全ての権限を与えられて製作されたデビュー作。後のことを考えると悲しくなるけど、「ハリウッドは子どもが欲しがる最高のオモチャさ!」と言い放ちたくなる気持ちも分かる破格の条件。

内容自体は新聞王チャールズ・フォスター・ケーンの栄枯衰退を描いた物語。大胆とも自由ともいえる撮影法は、今では当たり前になるほどに影響を与えた。
話としてはありきたりかもしれないけど、彼が死に際に残した「バラの蕾」という言葉の謎を追いかける形で話は進み、ラストの切なさは物語としても大好き。
「金持ちでなかったら偉大な男になっていたよ」と自身の生い立ちを皮肉る青年。何も与えず誰かに愛される事だけを求める男。自分以外を信じず全てを貯め込んだまま終わる人生。
愛に餓え、愛情を求め続けたその姿は現代から見ても十分に訴えかけてくるものがある。
和桜

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