和桜

地下水道の和桜のレビュー・感想・評価

地下水道(1956年製作の映画)
3.9
ワイダ監督の「抵抗三部作」の中で一番好きなのがこの二作目。ソ連に唆されポーランドのレジスタンスが起こしたワルシャワ蜂起、その失敗により地下水道へと追いやられた彼らの姿が映し出される。
ソ連の検閲下にあった監督や映画は、何故か汚物にまみれた描写を好んで使う事が多い。今作もまさにその類で、カラーだったら耐えられないであろう汚水と毒ガスと残響が混ざりあった地下世界はかなり強烈だった。

居場所を奪われ地下へと潜り、自国ではドイツ兵が闊歩し顔を出すのを待ち受けている。地上から射し込む光は彼らに希望を抱かせるが、それは更なる絶望への道標でしかない。
出口を求め彷徨いながら次々と死んでいく光景。これは逃げ場のない戦争の在り方を比喩的に凝縮したような空間でもあり、ドイツから戦後はソ連へと支配権を握られるポーランドの行く末そのもの。これを31歳で撮れるのが直に生きた世代ゆえなのかもしれない。

地味にリアルで印象的だったのが、敵味方の殺し合いに混じった男女の憎愛殺人だったりもする。
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