和桜

裁きの和桜のレビュー・感想・評価

裁き(2014年製作の映画)
3.5
政治的な歌で下水掃除人を自殺に追いこんだとして民謡歌手が逮捕される。法廷劇と呼ぶにはあまりにお粗末で、不条理な裁判過程。司法に携わるカースト上位から市井の人々の日常生活までを交えながら、インド社会の多面性や複雑さが垣間見える。
ムンバイを拠点にしながらも、ボリウッドに染まらないチャイタニヤ・タームハネー監督作品。

一日に何件の事件を処理できたかが重要視されるように、そもそも一つの裁判に時間をかけるキャパシティが足りていない。そしてその原因の一端が容易に逮捕できてしまう恣意性で、釈放された瞬間にまた別の罪状で逮捕される。
一度目をつけられると裁かれるまでやり直しが続くであろう無限ループを、引きの固定カメラで淡々と撮る不気味さ。『裁き』という題名が非常に重く、恐ろしくなる現実だった。
制度と価値観のズレも酷く、毎度のことながら西洋の司法の在り方を普遍化させるのは無理があるように思える。
和桜

和桜