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市民ケーンのefnのレビュー・感想・評価

市民ケーン(1941年製作の映画)
4.1
 バザンはワンフレームでリアリティがどうこう言ってたけど、現実感どうこうより演出強度の方が勝ってるように思う。
 パンフォーカスは確かにすごい。が、それは窓越しの幼少期のケーンからトラックアウトして遺産相続でもめる親族を囲み構図に落とした時や新聞を閉じて発行部数に沸き立つ会場を捉えた瞬間があるからこそ関心を引くわけで、そこには記録映像を志向するような作為はない。始点には必ず作為がある。
 後半もかなり遊んでる。最初の妻エミリーとの横並びの食事風景が切り返しを挟んでじょじょにテーブル端に移動したり、歌うスーザンからブーム(垂直縦移動)で裏舞台で酷評する舞台係に着地する。これが遊びでなくて何なのだろう。
 全体的に奥行きを利用した構図が多いけど、段階的に方法を変えているのも面白かった。窓越し新聞越しの賑やかな風景、ケーンから離れていく人々との距離、空間を用いているのは同じなのに画面はまるで違う。
 総合的には思ったよりもおふざけに振り切った映画でお得感があった。40年代の最高水準の技術でこんなへんちくりんな映画を撮るってウェルズは変な人だな。
 あとカッティングで見せている場面があまりなから撮影技術だけがすごい、とかそこから一歩進んで現実感がどうこう言われてしまうのかな、とか思った。60年代までの映画は遠景で遊ぶ作家が多かったけど、今となっては遠景そのものが貴重だししょうがないのかもしれない。
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