車輪にこだわった表現が多い。いちいち自転車を漕いで情報を上にあげる見張りの少年、女の子を誘拐するためにスライドドアを開けてずずっ迫ってくる車、こぐ、はしる、という動きが二足歩行とは違う雰囲気を醸し出している。編集も妙で、普通は走りはじめたら間を切って伝言を渡すなり誘拐す(扉を閉じ)る画面にいきなり達するんだけど、その間をあえて残すような編集をしているのも薄気味悪かった。
第三の男で成功してしまって次にどうしようか、という迷いながつくったのがこの映画らしいけど、あれを上書きするというより笑い飛ばすようなつくりになっていて、これはこれで面白い。
本筋とは関係ないけど情報部がスケート場で誘拐計画を練る場面が好きだった。こういう目に見える形の諜報もあるんだな……。