♪ 壊れ壊れてゆけ 撃ち殺せないピストル
どうせ奪えるなら 完璧にと願ってた
これは難易度が高い作品ですね。
ゴダールっぽい…とか書くと「アイツは何も分かっちゃいねえ」と後ろ指を指される気もしますが、でも、最初に連想したのは『気狂いピエロ』。鮮やかな映像と繋がらない物語。噛み砕くのが大変な物語でした。
ただ、割と台詞は多いんですよ。
世界観を説明してくれる場面もあるので、中盤までは付いていくことが可能。というか、何が出るか分からない“ビックリ箱”のようで面白かったのです。
…が。
そこから先は混迷を極める一方。
その発端が韓英恵さんのヌードでした。
何故、彼女が脱がなければならないのか、と考えているうちに、謎の博覧会は出てくるわ、白塗りの男たちが踊り出すわ…殺し屋同士の戦いという大枠は理解できるものの、演出がぶっ飛びすぎて旨味を感じることが出来ず。
確かに映画は“動く絵”を観るもの。
でも、その“動く絵”の先に心を動かす“何か”があるから惹きつけられるわけで、目にも鮮やかな画ばかりが前に出てきても、1時間もすれば飽きてしまうのです(不遜でスミマセン)。
もしかしたら、それを回避するためのエロなんですかね。しかし、物語序盤から艶めかしい展開(江角マキコさんが自分を慰めるとか)は大いにあったわけで、それを表層に浮かばせる意味があったのでしょうか…。
しかも、江角マキコさんの美は“人形の美”。
生々しくないんですよね。着物の裾から白い肌がチラリと見えても健康的なんです。
それに引き換え、韓英恵さんにあるのは背徳感。青い蕾(って書いているだけで背中がむず痒くなる…)は観てはいけない、と本能に訴えかけるものがあるのです。この辺りを当時70代の鈴木清順監督がどこまで計算されたのか…ちょっと興味深いです。
まあ、そんなわけで。
物語中盤にクライマックスが来てしまったことで難易度がググっと上がった作品。尺がもう少し短ければ…なんて思いますが、尖がった筆致は一見の価値あり。普通の映画に飽きている人にオススメします。