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シン・レッド・ラインのmareのレビュー・感想・評価

シン・レッド・ライン(1998年製作の映画)
4.5
明日になれば隣の戦友が死んでいるかもしれない。寝そべる大地からは土の香り、草叢に飛び散る血。テレンスマリックの表現から自然の雄大さを映像美という形式からも突き抜けて、戦場そのものの匂いや爆風とともに土煙が吹き荒れる卓越したリアルを感じた。人間だけが特別な何かということは決してなく、どこまでも無数に広がる自然の一部でしかない。生命力溢れる情景に映し出される人間の脆弱な命が当たり前になる環境。今の今まで仲間を思いやり動いていた一人が、動かなくなりただの肉の塊となってしまう無情さ。人間の恐怖と慣れ、残酷にも適応せざるを得ないこういう実態が過去にあって、人が人を殺めることがいかに無意味で滑稽なことであるか痛いほどに胸に刺さる。戦争映画という枠組みを超えた命の尊厳への俯瞰には度肝を抜かれる。
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