学生時代に、法政大学出版の「叢書ウニベルシタス」で『論理哲学論考』を見た(読んだとはいえない)ことがあるが、数式も多く、さっぱりわからなかった。
この映画の監督、デレク=ジャーマンは、当時を再現しようとかリアルな設定をしようとかいう意図は全くなく、わかりやすくもしない、それが潔い。
黒いバックに人物が数人いるだけで、大学の講義シーンもセットは黒板のみ。
オーストリア出身とか、ユダヤ系という出自とかについても、掘り下げる気はなし。
しかし、セリフの随所に『論考』の記述が取り入れられ、なんとなくではあるが理論に触れることはできる。
ヴィトゲンシュタインが怒りっぽかったことや、同性が好きだった描写もある。これは知らなかった。
実験映画。退屈だけど、心地よいのか悪いのかわかりにくいけど、忘れようとしても忘れられない映画になった。