アーリー

Virginia/ヴァージニアのアーリーのレビュー・感想・評価

Virginia/ヴァージニア(2011年製作の映画)
3.0
2023.4.19

今のところコッポラ最後の監督作。
新作がトラブル続きらしいけど、なんとか公開してほしい。

謎の少女、吸血鬼、牧師による殺人事件、夢。色々な要素が盛り込まれたごちゃごちゃした作品。「ドラキュラ」や「胡蝶の夢」の感覚と地続きな感じがする。ワイン事業の成功である程度裕福になった彼が、職業監督という立場から脱却し、自分の好きなように撮ることができるようになった。そのことが特にわかる今作。なかなか面白くない。面白くないというか、ストーリーがそもそもまとまっていない。色んな要素が全部中途半端で、バラバラで、一本の筋道になっていない。エル・ファニングやオールデン・エアエンライクは夢の世界=過去の人物なのか、それとも現代の人物なのか。この2人がどちらの世界にも出てくる。牧師と警官のシンクロ加減もなんなのか。最後エルに襲われたヴァル・キルマーはその後どうなったのか。普通に新作の小説を編集者に出して物語は終わる。もしかしたら全部小説の話?小説のラストシーンがエルに襲われる場面で、映画としてのラストが小説を提出するシーンか。なんかよくわからん。

舞台はとある街。7つの面がある時計台はそれぞれが違う時間を示している。つまりそもそも街そのものが時間という概念が他と違う。時間をさしているけど、それが何年何日単位で全部違う。街そのものがこの物語の登場人物。なんとなくベルトルッチの「暗殺のオペラ」を思い出す。そういう設定の小説。時間の概念が狂ってるから、エルとオールデン・エアエンライクが過去にも今にも登場する。ヴァル・キルマーが迷い込むのは夢ではなく、現在の時間軸と混ざり合った過去の世界。んー、わからん。エアエンライクは吸血鬼で、ずっと生きてるってことなんかもしれん。エルも彼に噛まれた描写があったから吸血鬼になったんかも。じゃあ彼女に噛まれたヴァル・キルマーも吸血鬼ってことになるよな。けどそれがオチに繋がらない。やっぱり小説の中身を映像にして、その小説を提出したところで話が終わるだけか。

かなり変な作品。今作の評価が、ヴァル・キルマーの小説に対するものになる。3万部とそこそこの売れ行きやったとのことやから、わざと穴のあるようなあんまり面白くない作品にしたのかも。そう考えたら面白い作り。わざと面白くない作品を作る。ジム・ジャームッシュ的なノリかな。稼ぐ気ないもんな。なんと贅沢な作品なんやろう。

ヴァル・キルマーはまだ声が出せる時。「トップガン マーベリック」で久々に見た以来かな。後ろで括ってるの似合わなすぎる。エル・ファニングは普通に可愛い。役と同じで12、3歳ごろか。にしてはきついシーンとかいっぱいあったと思うけど、しっかり演じ切ってた。エアエンライクは前作から続けて出演。なんかイメージと違う感じで違和感。「ハン・ソロ」で主演して以降、作品なし。なんでやろう。あんまり売れへんかったのか。ただノーランの最新作で久しぶりに出演してるから楽しみ。あとはブルース・ダーン。この人は覚えておきたい。なかなか良い演技やった。

アメリカン・ゾエトロープが制作会社やし、やっぱり自主作品。面白くはなかったけど、こんなことも可能なんやと思わせてくれた。
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