カルダモン

エレファント・マンのカルダモンのレビュー・感想・評価

エレファント・マン(1980年製作の映画)
4.9
19世紀ロンドンに実在したジョン・メリックが辿る数奇な人生。彼の担当医であり友人でもあったフレデリック・トリーヴスの回顧録を基にデヴィッド・リンチが映画化。『エレファントマン』とは母親が彼を妊娠中に象に踏まれ、異形の姿になったのだという見世物小屋の売り文句から。
オープニングは象の姿と母親の姿のオーバーラップで幕を開けるのだが、象の悲鳴とも母親の悲鳴ともつかない叫び声が恐ろしい。



人から注目されることや、心を開いていくことにより生じる喜びと痛み。冒頭の見世物小屋からラストの劇場に至るまで、文字通り刺すような視線を感じる。
同時に〈観る〉と〈観られる〉の間に挟まれながら、自らもまた映画館に足を運んでいる事実を突きつけられ、強烈に〈観る〉側の人間であることを意識する。


4Kリマスターによる恩恵なのか、劇場の音響のおかげなのか、音の迫力に圧倒されました。地鳴りのようにゴーーーーと鳴る蒸気音、路地裏で漏れ出す水の音など、やっぱり自宅の環境ではなかなか感じにくい部分だったりするので感動。大スクリーンに映されるモノクロの階調も素晴らしく美しかった。まさかスクリーンでこの映画を観られる日が来るとは思わず、堪能できて嬉しいかったですね。


改めてトリーヴスを演じたアンソニー・ホプキンスが格好良い。で、エレファントマンを演じたジョン・ハートはあれだけ特殊メイクを施していながらやはりジョン・ハートの眼をしている。