カルダモン

aftersun/アフターサンのカルダモンのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.2
娘ソフィと夏の休暇を過ごす父カラム。限られた時間が過ぎたらソフィは離別した妻の元へ帰ってしまう。すぐそばにいるのに寂しい、とお互いに感じている。記憶を焼き付けるように取り止めもない親娘の時間をホームビデオに収め、ゆったりと過ごすトルコの旅。淡々と描かれる時間、二人の会話の距離感がよい。11歳、いろんな会話ができるようになる年頃。不安定ながら表には出さない娘の健気、ソフィはもう一度家族が元通りになるかもしれないと期待していたかも。父も同じように思っていたかも。この映画、さりげない場面の中に超絶的に凝った演出を施していて油断ができない。わずかなフォーカスの合わせ方、構図の取り方などなど、見逃していたメッセージが発見できそう。単に技巧を凝らすだけではない、物語と密接な演出が素晴らしかった。

成長したソフィは父親の視点で撮られたホームビデオの中で11歳の自分の姿を見ている。次に会うときにはどれだけ成長してるだろうか。もしかしたらこれが最後の姿になるだろうか。という父親の想いが、20年前のタイムカプセルのように伝わってくる。扉の向こう側、ストロボの焚かれたクラブの闇に消えていく父の姿が頭に残り続ける。