りふこ

パンズ・ラビリンスのりふこのレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
3.9
2014/07/26鑑賞(DVD/吹き替え)

ヒェーッ……。
一見大人向けで上品なファンタジー作品(ちょっと薄暗い世界観の)に見えますし、それも間違いではないですけど、メインはあくまで現実サイドですね。

オープニングなんて主人公の少女が意に染まない引っ越しに憂鬱になっているところから始まるし、ちょっと千と千尋の神隠しっぽくすらありますね。
でも、それオープニングだけだから!すぐえらいことなるから!
この話は一見異世界ものファンタジーと見せかけて、比重は実は戦火の中にある現実に置かれてるのですね。
新しい義父が軍の偉い人だから物質的にはそこそこ恵まれてるけど、山の中の最前線生活は内気で感受性豊かなタイプのオフェリアの精神的にはだいぶしんどいはず。

また、お母さんの性格設定が絶妙ですよね…基本善人っぽいし、娘のことも愛してるんだけど、根っこの部分で「か弱い女」なんだよなあ……。
独りでは長く立っていられなそうなタイプですよね。
それでさらに妊娠までして気が立ってるし、娘の心まで慮って守ってやれる余裕はないんだなってのはわかります。
お母さんに非があるわけでもないんですけどね……。

その分、現実の非情ぶりを一人で体現していたのが義父であるビダルさんですよね。
いかにもサディスティックで独善的で差別的で高圧的な軍人でした。
このお義父ちゃんがゲリラ疑惑のある住民(勿論濡れ衣)を容赦なく射殺したり、捕まえたゲリラを拷問したりと八面六臂の大活躍!
頼むからおとなしくしてろ!!いえ、していて下さい!

じゃあオフェリアちゃんは現実逃避的に異世界にすがるのかっていうと、こっちには第二の非情キャラ・パンさんがおわすという隙を生じぬ二段構え。
そのパンさんが言葉巧みにオフェリアちゃんをそそのかして珍妙な試練に駆り出すわけですが……。
毎回毎回、パンがちっとも本当のこと言ってるように見えないのが怖いですよね……パンさん胡散臭いんだよー!

最後の展開が現実か否かは解釈が別れるのでしょうか。私は現実じゃないと思います。
救いは家政婦のメルセデスさんの歌う子守唄ただ一つって言う流れの方が好みかな。

いやー、終盤の展開とか惨いですけど、面白いんですよ?
綺麗でいい作品ですよ?
美術の凝り具合は一見の価値ありますよ?
りふこ

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