グラッデン

パンズ・ラビリンスのグラッデンのレビュー・感想・評価

パンズ・ラビリンス(2006年製作の映画)
3.8
「あわせ鏡」としてのおとぎ話。

『シェイプ・オブ・ウォーター』鑑賞を終えて、復習も兼ねてギレルモ・デル・トロ監督の代表作を鑑賞。

ダークファンタジーな作風とは知らず、寝る前に見始めて大失敗でした(汗)クリーチャーの描写が非常に独特で、日本人の目線で見ると妖怪のような雰囲気があるので、今から夢に出てきそうで怖いですw

第二次世界大戦中のスペインを舞台にした本作は、主人公の少女が抱く虚実混同の世界観をビジュアル化したといったところ。

父親を亡くして再婚相手の軍人のもとに身を寄せる境遇、弟の命を宿しながらも衰弱する母親の姿、そして内戦後の混乱が続く中で感じられる閉塞感、子どもながらも痛く感じる現実の過酷さが、彼女の中で「どこか遠くに」という気持ちを募らせていき、それが大好きな本の物語のような世界へと彼女の精神を導いていくように感じました。

魔法の力があれば、自分の願うことが全て解決してくれる、そんな万能感こそが、それが彼女の拠り所になっていくことが痛く伝わってきました。自分の目に見えないものを見ようとするために、あわせ鏡を用いるように、心の中の魔法の王国は、作中における現実世界から見た彼女にとっての鏡の国の世界なのかもしれない、と感じました。