野獣が孤独に暮らす森のなかの屋敷に迷いこんだ商人。
野獣のお気に入りのバラを折ってしまった彼は、身代わりに娘を差し出せと迫られる。
商人の娘ベルは自ら森の屋敷に赴き、野獣の心に優しさを見つけるが…。
フランスの童話『美女と野獣』を映画化したファンタジー。
コクトー作品では最も有名な作品。
ディズニーの同題の作品とはかなり異なった雰囲気です。
父親が自分のために野獣の庭からバラを摘んでしまい、そのために殺されることになった父の代わりに野獣の城で住むようになり、そのなかでだんだん仲良しになっていくおはなし。
ストーリーはディズニー版よりも原作に近い。
だからベルも野獣に対して結構そっけない態度です。
野獣「その眼(獣をみる眼)で見るな」
ベル「だってあなたは獣じゃない」
野獣「(;´д`)シュン」
ってはっきり言っちゃったり。
ベルが野獣に対し辛口で、「醜い」「獣でしょ」等と無遠慮に言い放ち、野獣がそのたび凹んでいます。
野獣がかなり繊細な心の持ち主で、その姿とのギャップにほろり・・・ 。
でも商人の娘、しかも破産目前の商人の娘だという背景を考えると、優しいだけの娘よりはこの「潔い娘ベル」の方が現実味を帯びているかも。
また、ベル役の女優はすごく美人で『美女と野獣』にあった役者だと思う。
シンメトリックな顔立ち、均整のとれた容姿。
それでもっている作品といっても過言ではない。
他の登場人物もとげのあるキャラ達が多く、彼らのやりとりも見ていてとても面白い。
あと、とにかく衣装が美しく、うっとりしました。
他にも、モノクロの画面から浮かび上がる色彩、匂い立つ艶やかさ、おとぎ話ゆえの儚い美しさ。
鏡、生命を帯びたようにゆらめく煙、暗闇に浮かぶ蝋燭、白馬の尻尾の滑らかな動き、ドレスの輝き、光輝く涙・・・。
よく考えるとすごいことが起きてます、この映画。
CGも色さえなかった時代に、野獣の城の魔法をじつに幻想的に表現してます。
館の壁から腕がニョキニョキ生えてた。
フィルムの逆回しとか、1940年代になかなか考えてるな~って素直に感心しました。
王子様のカボチャパンツすら、芸術的だと感じてしまった。
ラストは白黒画像にも関わらず、大聖堂の天井を飾るカラーの壮大なフレスコ画を彷彿とさせる程に美しいです。
ラストの逆転劇の必要性はわかりにくいが、詮索せずにお伽話と捉えよう。
古き良きフランス映画。