くまねこ

籠の中の乙女のくまねこのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.8
「籠の中の乙女」ギリシャ🇬🇷のヨルゴス・ランティモス監督の長編デビュー作をAmazonプライムで視聴。10年8ヶ月ぶり2回目。ストーリーを失念してたが、こんな変テコで歪なブラックユーモア映画だった事に驚く…。

歪な家族の描写について、一切説明や劇伴がないのも面白いし、撮影も独特過ぎる。人物が動いても追いかけず、そのまま首から下を撮るカットが多い。

汚れた人間の世界を見せたくないという教育方針なのか、異常に清潔な部屋に暮らし、子供たちに意図的に誤った言葉を教えるテープ教材や電話を隠したり、飲み物のラベルを意図的にはがしたり、ロゴのない無地のシャツを着せたり…子供たちを純粋培養で育てようとする夫婦の意図は何だろうか…

「子供が家を出るのは、犬歯が抜けた時だ!」と教育する父親。犬歯は自然に抜ける訳ないよね、つまり家を出てはいけない!って家訓な訳だ。

当初、なぜ父親は思春期の息子に対し性欲処理係の女性を雇ったのだろうか??と考えてた…そうか、妹たちとの近親相姦を避けるためだ!なるほどね!

初めて猫に遭遇した長男くんのあのリアクション、その後の猫についての父親の説明→猫の侵入に際に備えて家族全員でのワンワン練習に声を上げて爆笑してしまった

両親の結婚記念日をお祝いする、姉妹による変なダンスシーン。よく考えたらあのダンスは明らかに「フラッシュダンス」だし、鮫の種類を話したり(ジョーズ)、シャドーボクシングをしたり(ロッキー)。あの性欲処理担当女性クリスティーナからのビデオテープはきっとハリウッド映画だったんだ!

(これって2018年公開の「ブリグズビー・ベア」もこんなテイストだったよね?)

終盤、外界を知りたくてハンマーで無理やり自分の犬歯を抜き、父親の車のトランクに隠れて外界に飛び出そうとする娘。
翌朝、職場に出勤した車のトランクが映されるが開かぬまま…。娘は生きてるのか??

ある意味、外界は危険だからと言ってた父親の言う通りだったのかも…。

こんなブラックユーモア全開のこんなラストだったんだ…ヨルゴス・ランティモス監督はやはり意地が悪い。
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