よしまる

不良少女モニカのよしまるのレビュー・感想・評価

不良少女モニカ(1952年製作の映画)
3.8
 まだ神を描くことにどっぷりではなかった頃の若きベルイマンによる青春もの。

 当時35歳のベルイマンは、蜜月関係にあった14歳年下のハリエット・アンデルソンを主役に据える。愛する者にヌードも辞さずこんな直情的な17歳の不良少女を演じさせるとはすごい。2人は離婚した後も長くビジネスパートナーとして作品を作り続けた。

 幼くして母を亡くしたハリーと、大家族の中で居場所のないモニカは、ふたりきりの逃亡生活を始める。
 戦後まだ間もない1953年に社会格差や労働者問題を含ませながら、マーロンブランドよりジェームスディーンよりも以前に「大人はわかってくれない」と嘆く若者を描いている。

 ボクはこれより前の「夏の遊び」がベルイマンの中でもトップクラスに好きで、本作でもスウェーデンの夏の風景を思う存分満喫できる。

 モノクロながらすべてのシーンが光と影を帯びて美しく、フィルムのどのコマを切り取ってもインスタ映えするし、リールやTikTokならバズり間違いなし。

 原作小説も一世を風靡していたらしいけれど、ハリーとモニカの青春の輝きと憂いに満ちた表情、当時はセンセーショナルだったことが窺い知れるエロティックな表現を映像化する手腕は圧倒的だ。
 どれもが時代を超越しており、この気だるい雰囲気や衝動的な振る舞いがヌーヴェルヴァーグの雛形と言われるのも納得。

 それにしても、大人たちの都合に振り回されて、自分達の世界を築こうと逃避行、なんて話も当時は珍しかったのだろうけれど、こんな空虚な結末を迎える映画というのも無かったのではないだろうか。
 どちらが悪いわけでもなく、環境が2人を歪めてしまった側面も踏まえ、リアルな仕上がりにゾクゾクする。

 アマプラの解説にはラスト3分の結末がまるで物語のさわりであるかのようにサラッと書いてあるが、ありゃネタバレ警察に逮捕されるレベル。読まないようにね。