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お茶漬の味のzhenli13のレビュー・感想・評価

お茶漬の味(1952年製作の映画)
3.7
記憶が曖昧な小津監督作品再見シリーズ
笠智衆が営むパチンコ屋「人生甘辛教室」と『東京の合唱』にも出てきた「カロリー軒」はこの作品だったのか〜。
タイトルが直接物語に関与する珍しい作品。『淑女は何を忘れたか』のプロットを敷衍している。斉藤達雄、栗島すみ子、桑野通子によるスピーディで緩急に富んだルビッチ的コメディに対し、本作は必ずしもテンポが良いとはいえない。修善寺のシーンあたりまでは「これが2時間続くのか〜」とのれなかったものの、だんだんと佐分利信のやる気無い低音の声がいとおしく面白くなってくる。木暮実千代とサブリンがお茶漬けを作るために夫婦で台所を探るシークエンス(木暮実千代は茶碗と箸のしまい場所も知らないブルジョア奥様)に至るころには、この間延び感は犬も喰わない夫婦の複雑妙味なグダグダを描くために必要だったのだと感得して観ていた。

『淑女は…』のラストで印象的だった、時計の鐘の音とともに部屋が少しずつ消灯するシーンが何度も登場する。
一点透視構図における緩やかなズームイン・アウトがあったり斉藤一郎の音楽が矢鱈とエモーショナルだったり、戦後作品の中では異質な印象を受けた。じつは1939年に検閲で通らなかった企画だったとのことで、そのあたりとも関係しているかもしれない。

ウルグアイのモンテビデオに単身赴任か…苦労してんだろうなぁサブリン。
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